2003年防災訓練

大都市災害発生! あなたは1/371万人の一人です

あなたは歩いて帰れますか?

 1999年度から2002年度まで、東京災害ボランティアネットワークは、9月1日の「防災の日」近辺に開催される東京都の総合防災訓練に独自プログラムを提案し、参加・協力してきました。特に、災害時、東京都内で371万人と想定されている「帰宅困難者」への対応訓練を重点課題としてプログラム提案をしてきました。
 大都市災害特有の課題である「帰宅困難者対応」は、その想定人数を考えると、最重要課題のひとつですが、実践を伴った検証がなされにくい課題でもあります。
 帰宅困難者対応の課題は行政レベルではもちろんのこと、事業所でも「事業継続」「事業再建」という切り口で議論され始めています。しかし、まだまだ市民にその課題の重要性が十分に伝わっているとはいえません。  今回の訓練ではタイトルを「市民による防災訓練」とし、市民が市民に対してその重要性をアピールする場として位置付けて開催しました。参加者の方々だけではなく、訓練経路となる甲州街道沿いの市民の方々にも、登り旗、広報車、また、「帰宅困難者対応訓練実施中」「尊いいのちをみんなで守ろう」というメッセージ入りのゼッケンを使いアピールしました。
 実践的な訓練でも、数多くの市民の方々と共におこなわなければ意味はありません。東京災害ボランティアネットワークは、これからも関係機関・団体、事業所、市民の方々と顔の見える関係を築きながら実践的な訓練を実施していきます。

 東京災害ボランティアネットワーク 2003年度防災訓練 帰宅困難者徒歩帰宅訓練

●日時: 2003年8月31日(日曜日)10:00出発〜17:00頃

●会場: JR新宿駅東口アルタ前〜つつじヶ丘駅前(約14km)



徒歩帰宅訓練

 「都心で大災害に見舞われてしまったら…」 「交通機関がまったく動かなかったら…」 東京で大災害が発生した場合、交通機関の麻痺に伴う帰宅困難者は東京都の推定で371万人を超えると言われています。
 日本における大都市の多くは、人口が許容範囲を超えるほど密集しているため、居住地域と就業地域が離れています。東京では、その境界線が環状6号線であり、山手線であり、環状7号線であり、環状8号線であるといえます。その一方で、利便性を向上させるため、都市部での道路の交通網を整備し、鉄道のダイヤをより過密にしてきました。これにより、居住地域と就業地域の距離は、(時間的には)一気に縮まったといえます。
  しかし、災害時にはこれらの交通網・鉄道網のほとんどが寸断される可能性があります。一気に縮まったと思える居住地域と就業地域の距離が、自宅との距離・家族との距離を目の当たりにさせられます。 都市部での大災害を考える時、阪神・淡路大震災がイメージされます。しかし、阪神・淡路大震災は午前5時46分に発生した災害であり、「帰宅困難」な状況ではありませんでした。高速道路・一般道路を含め、多くの車が動き出す前、新幹線を含めた鉄道が本格的に動き出す前に発生した災害でした。
 そこで、今回市民による防災訓練として「徒歩帰宅訓練」を実施するにあたり、多くの帰宅困難者が発生する時間であり、帰宅困難な状況になったとしても行動が起こせる時間として、午前9時を設定し、また、居住地域と就業地域の境界と想定できる環状8号線を越える京王線つつじが丘駅を、終着点として設定しました。

災害時の地図

 災害時、幸いにして怪我などがなかったとしても、帰宅困難者になってしまった時、さらに見知らぬ地域で帰宅困難者になってしまった時、重要になってくるのは、自らがどこにいるのかが把握できる地図情報であると考えられます。
  体力的に自力で帰宅することができたとしても、帰宅経路がわからなければ、また、経路の安全が確保できなければ徒歩帰宅を開始することは得策ではないかもしれません。都市を横断している主要な街道の沿道地図や、沿道の被害状況が記載された地図(情報)を手に入れることが帰宅への一歩になるとも考えられます。
 今回の訓練では出発時に甲州街道沿いのエイドステーション情報を盛り込んだ地図を配布し、また、拠点エイドステーションでは、拠点エイドステーション間の情報(今回は拠点エイドステーション間のガソリンスタンドエイドステーション情報)を盛り込んだ地図を参加者に配布し、街道情報の伝達を試みました。
  帰宅困難者は多くの場合、駅(特にターミナル駅)や公園、施設に滞留してしまうことが考えられます。大きなターミナル駅では数千人とも数万人ともいわれる帰宅困難者が滞留してしまう可能性があります。東京都では、駅に滞留する帰宅困難者を近隣の公園(広域避難場所)へ誘導することになっています。誘導をスムースにおこなうためにも公園までの地図をターミナル駅に用意しておくこと等が重要になってくるのではないでしょうか。

集団での帰宅

 災害時、帰宅困難者が発生した場合、371万人という数を想定すると、都市部を横断する街道は徒歩帰宅者で埋まることは容易に想定できます。瞬間的には数Kmに渡り人々が列をなすことも考えられます。
  今回の訓練では出発時に30名〜50名の班を編成して徒歩帰宅を開始しました。しかし、人それぞれで歩く速度が違い、また、その距離が10Km以上となると集団での統制の取れた帰宅は難しいと言わざるを得ません。わずか14Km弱の距離でも、1時間〜2時間の差が生じることが確認されました。


〜徒歩経路〜

新宿中央公園〜甲州街道〜山手通り〜環状七号線〜環状八号線〜金龍寺 14Km弱、約5時間
〜参加人員〜
徒歩帰宅訓練参加者 約350人
沿道支援・救護班    約20人(北沢警察署の沿道支援含む)



エイドステーション設置訓練

 帰宅困難者は、そのほとんどが主要幹線道路を通っての徒歩帰宅となります。人によって自宅までの距離は違いますが、数Km〜数10Kmになります。数10Kmになる場合には数日間かかる可能性すらあります。
 そんな帰宅困難者を、沿道で支援する拠点となるのが、「エイドステーション」です。エイドステーションは、主要幹線道路沿いにある既存の施設が機能を果たすことになります。そして、エイドステーションを担う支援者は、施設所有者(従業員)や地域住民、駆けつけたボランティア等になります。
 今回の訓練では「新宿中央公園〜つつじが丘駅」の甲州街道沿いに17ヶ所のエイドステーションを設置することができました。甲州街道沿いのガソリンスタンド11ヶ所と、埼玉県領事館、カシオ計算機梶A明治大学和泉校舎、NTT上北沢営業所、榮太楼総本舗、金龍寺の5ヶ所を拠点エイドステーション(埼玉県領事館は情報本部)として、事業所、学校、宗教施設と様々な施設で設置することになりました。

エイドステーションの役割

 エイドステーションにはいくつかの役割が考えられます。徒歩帰宅者のための「休憩所・トイレ」としての機能、徒歩帰宅者が怪我した場合の「救護所」としての機能です。もし、情報を受発信できる環境が整うのであれば、帰宅経路の情報、自宅地域の被害状況、家族の安否情報などを帰宅困難者が受発信できる「情報受発信拠点」としての機能も求められる場合もあります。雨や風をしのげるスペースがあるなら「宿泊所」としての機能を求められる場合もあります。
 しかし、もっとも重要なエイドステーションの役割は「励まし」ではないでしょうか。被災地を横目に、家族の安否を気遣いながら、徒歩で帰宅を目指す者にとって、「励まし」は安心を与え、勇気を与え、冷静を生むのではないでしょうか。この役割を果たせないエイドステーションは、環境が整っていてもエイドステーションとして機能しないのではないかとも思います。

ガソリンスタンド

 幹線道路沿いにある施設を想定する時、エイドステーションとして「ガソリンスタンド」は非常に有効です。一見すると危険なイメージがあるガソリンスタンドですが、現実は消防法による厳しい耐震基準をクリアしていなければ営業できないため、一般建物よりも耐震性が優れています。阪神・淡路大震災でも致命的な損壊を起こしたガソリンスタンドはありませんでした。ガソリンスタンドは主要幹線道路に数Kmごとに設置され、ある程度のスペースも確保できます。さらに、都内の多くのガソリンスタンド(東京都石油業協同組合員)では東京消防庁の指導のもと、救急救命講習修了者を配置し日常から「救急ステーション」として機能しています。
 今回の訓練では、「東京都石油業協同組合」の協力によって、11ヶ所のガソリンスタンドがエイドステーションとして設置されました。

カシオ計算機

 カシオ計算機でのエイドステーションは出発地点である新宿中央公園から1.5Km地点ということもあり、休憩所としてではなく、情報発信のエイドステーションとなりました。

明治大学和泉校舎

 明治大学和泉校舎は全行程の中間地点になっていました。大学のような広いスペースを持っている施設は拠点エイドステーションとして十分な機能を果たせます。今回の訓練ではこのエイドステーションが「配食所」「救護所」「休憩所」「RB隊の情報ステーション」となりました。

NTT上北沢営業所

 NTT上北沢営業所では世田谷区上北沢町会、日赤奉仕団上北沢出張所分団の方々が運営を引き受けてくださいました。帰宅困難者の徒歩帰宅は数週間続くことも考えられます。地域が無事な場合は地域の方がエイドステーションを設置することも大変重要なことであると思われます。

榮太楼総本舗

 2001年度の東京都・調布市合同総合防災訓練時にもエイドステーションとして使用させていただきました。前回に引き続き、榮太楼の飴の提供がありました。

金龍寺

  終着点となった金龍寺。ここまで徒歩で来られた方は300名弱。多くの方が明治大学和泉校舎でリタイアしていました。もっとも早く金龍寺に到着した方は13:30。わずか3時間で14Kmを歩いたことになります。

〜拠点エイドステーション〜

カシオ計算機 20名
明治大学和泉校舎 100名
NTT上北沢営業所 30名
榮太楼総本舗 20名
金龍寺 10名
(埼玉県領事館) 10名
〜ガソリンスタンド エイドステーション〜 JOMO笹塚/昭和シェル代田橋/出光下高井戸/エネオス下高井戸 モービル桜上水/エッソ上北沢/モービル上北沢/エネオス烏山 エネオス千歳烏山/モービル給田


情報伝達訓練

 災害時に現場の情報を収集し、被災地を「点」ではなく「線」として、また「面」として把握し、広域的な活動を円滑に進めるために、また、後に続く帰宅困難者のための情報の精査をするための情報伝達訓練をおこないました。

 使用した機器  今回の訓練ではNTTドコモ、NTTドコモ鞄結梵ン備サービスセンター等から借用したFOMA(TV電話)11台、衛星電話5台、マイクロソフト鰍ゥら借用しているPC5台、東京都生協連から借用したMCA無線14台を使っての訓練となりました。

 情報の受発信 各拠点エイドステーションに情報班を配置し、インターネットを利用して今回の情報の受発信にはメ‐リングリストを利用して、情報の共有化を図りました。


計11ヵ所のガソリンスタンドがエイドステーションとして設置され、トイレの貸し出しとポケットティッシュの提供がありました。

 


6ヶ所設けられた拠点エイドステーションでは、経路地図などが掲示され、徒歩帰宅者に対し情報提供がおこなわれていました。また、ちょっと役立つ防災クイズも展示されていました。


沿道支援として、救護車や広報車も参加。また、地元警察署(上北沢署)との連携もおこなわれ、上北沢管区では警察官がパンフレットの配布と誘導をしてくれました。

ボランティアのみなさん

 徒歩帰宅訓練はもとより、エイドステーション設置訓練でも、数多くのボランティアの方々に、運営スタッフとして参加していただけました。

埼玉RB、東京RBの方々には甲州街道の道路情報を集めてもらうと共に、メッセンジャーとして拠点エイドステーション間の情報伝達を担ってもらいました。

 徒歩帰宅訓練には本当に数多くの方々に参加いただくことができました。完歩した参加者の方には、協力してくださった行政/団体/企業からの提供品がお土産として渡されました。

 当日のチラシ

東京災害ボランティアネットワーク
事務局長:上原泰男 〒162‐0823
東京都新宿区神楽河岸1−1
東京ボランティア・市民活動センター気付
TEL03−3235−1171
FAX03−3235−0050